山口県阿武町で給付金が1世帯に4630万円誤納付された件で、”犯人”とされた”田口翔”氏の行方が知れず、物議を醸しています。
田口氏は逮捕されるのでしょうか?何か犯罪が成立するのでしょうか?調べてみました。
”田口翔”氏は何をしたの?
事件を報じる朝日新聞の記事がこちら
誤振込の4630万円返還求め、24歳男性を提訴 山口県阿武町 https://t.co/DKp3wnYbCs
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) May 12, 2022
山口県阿武町が、本来であれば10万円ずつ463世帯に給付するはずのコロナ給付金を、誤って1世帯に納付。
誤納付を受けた男性が費消してしまったという事件です。
その後、自治体が”氏名”の公表に踏み切ったというわけです。
山口県阿武町がコロナで困窮する世帯に10万円を支給しようとしたところ、誤ってある世帯に463世帯分のお金(4630万円)を振り込んでしまい、しかも返還を拒否された問題
↓
現時点では犯罪ではないため返還拒否者の名前は非公開だったものの、自治体が氏名の公表に踏み切るhttps://t.co/wCXOSPz2CZ pic.twitter.com/CNNrwfY8so— 滝沢ガレソ🐯 (@takigare3) May 12, 2022
”田口翔”氏は逮捕される?犯罪になるの?
ここで、件の”田口”氏に犯罪は成立するのでしょうか?
ヒントになるのが、刑法246条(詐欺罪)です。
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
出典:e-Gov 刑法
典型的な詐欺が成立する場合は、加害者が被害者を騙して金銭を交付させる事例。
よくあるのが、高価な壺を買わせる場合です。
一方で、今回の”田口”氏は給付金を受け取る過程で、納付を働きかけるような行動を一切とっていません。
このような場合でも詐欺に当たるのでしょうか?
類似の事例として、自分の銀行口座に何人かが誤って金銭を振り込んだことを知った被告人が、その事実を告げずに、銀行の窓口で払い戻しを受けた行為について、最高裁は「自己の口座に誤った振り込みがあることを知った場合には…。誤った振り込みがあった旨を銀行に告知すべき信義則上の義務がある」と判示し、詐欺罪の成立を認めています(最決平成15.3.12)。
ポイントは、窓口で払い戻しを受けたこと。
機械は”騙されない”ので、ATMから引き出した場合は詐欺罪は成立しません。但し、自分が受け取る謂れのない金銭を入手したことになりますから、窃盗罪が成立する可能性は残ります。
(5月18日追記)
電子計算機使用詐欺罪で逮捕されました。
”田口翔”氏の住所は特定された?
自治体によって公開された文書には、山口県内のある住所が掲載されています。
これをもって、”田口翔の住所が特定された!”と断言するSNS等の投稿が多数見受けられますが…
必ずしも断言はできません。
というのも、民事訴訟法が被告人の住所以外の場所に訴状を送ることを認めているからです。
原則として訴状は、被告人の住所に送られます(民事訴訟法103条1項)。
しかし、世の中には住所不定の人や、他人の家に居候している人がいるのも事実。
こうした場合には、職場や家主に届けることも可とされています(補充送達:民訴法103条2項)。
今回の件も同様で、公開されている住所は”田口”氏の知人宅の可能性もあります。
公的機関によって公開された情報であるから、本人の住所と断定するのは性急に過ぎるでしょう。
実は氏名についても同様です。
本名を記載するのが通常ですが、特定が困難な場合は、商号や雅号ペンネームや通称名を記載することも認められています。そのため、本件でも”田口翔”が本名でない可能性が残っています。
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